#02 未来の暮らしを
構築する
少子高齢化や核家族化、時代の変化に沿ってライフスタイルの多様化と言われ続けてきた現代。ネットワーク技術の急速な進化により、働き方も変化している中で、住まうことと働くことの境界はより曖昧になってきました。特に 2020年は私たちの日常を激変させ、必ずしも暮らしの中心がリビングである必要がなくなり、仕事ができるスペースや自宅で運動できる場が中心になることも容易に想像できます。そんな中で、私たちは本来料理をつくるための場所であるキッチンスペースを空間のコアとして設え、エントランスから続く土間空間に大きなキッチンカウンターを配置しました。ここでは、料理をつくるという行為以上に、コミュニケーションの中心の場となり、作る、食べる、働く、迎え入れるなど社会とのつながりを包括できるような空間を生み出します。今、改めて住空間の多様性とはどういうものなのか、本来の意味を問い直し、その再考を重ねていくことが、新しい未来の暮らしに繋がると信じています。
エントランスから続く土間空間にw3600㎜のキッチンカウンターを設置。これまでのパーソナルなキッチンからほんの少し公共性を持った場所へ。食事をするダイニングスペースとしてはもちろんのこと、パソコンを持ち込んで珈琲片手に仕事をしたり、スツールに腰かけ料理を煮込みながらの読書もありです。親しい友人たちが自然と集まってくるようなこの場所の大らかさが居場所をつくり、人と時間をつなぐ新たな価値を生み出します。
キッチンの奥にはラウンジチェアを置いてゆっくりとくつろげるスペーズを設けました。例えば、お気に入りの椅子に腰かけて好きな音楽を聴き自分の世界に没頭する。ここではあえて部屋名を設けるのではなく、この場所に置かれる家具や生活中で生まれる行為によって場所に名前がつくような住空間の在り方を提示しています。住まい手が自分らしく暮らすために必要な場所を自由に提言でき変化も許容する、そんな場所になってほしいです。
玄関から土間を抜け、視界が抜けるその先にデスクとベットを置くためのスペースを用意。この住戸で一番静かな空気を持っています。扉を閉めてしまえば個室になりますので、一人で集中したい時やWEB会議などにも最適。室内には3か所に窓がありますので、閉じていても外への開放感がある、とても気持ちのよい場所です。夜は、光を小さく灯してリラックスタイムを。
今回のスタイリングに採用した家具は、素材が持つ魅力と現代の技術を融合させた新しい価値観でデザインされたものを採用。時代に左右されることなく普遍性な経年美を持ちながら素材、機能、デザインともに長く使っていただくことができます。床材や建具の素材選びも丁寧に行いましたので、空間としての統一性を大事にしながらも一つ一つの要素に個性を与え、手触りや質感、素材の組み合わせにこだわりました。決して主張が強いものではありませんが、ふとした瞬間に気づくことや時間をかけて変化していくこと、それらが暮らしの中に蓄積されて、住む人にとっての真の価値が生み出されていくのだと思います。多様化する現代のライフスタイルへ柔軟に進化していく暮らしの在り方と、大切にしたい価値を見極めながら細部にも注目してみてください。
キッチン道具は毎日使うものだからこそシンプルで丈夫、そして使うことがちょっと楽しくなるようなものを選択。調理道具として機能性を保ちながらも使わない時は佇まいが美しく在るようにと、熟考されたデザインたちです。
今回、キッチンカウンターの収納に採用している取手はオリジナルで制作。触れる度に風合いが変化していきますので、経年とともに愛着も増していくように思いを込めてデザインしています。
Artekの新作ロープチェアは、アートとテクノロジーが融合して生み出された浮遊感が魅力。ロープ、スチール、木材、3種類の異なる素材の特性活かした一脚です。座り心地も想像以上に良好。
玄関扉を開けた正面にスポットライトを設置。ディスプレイ空間として楽しんでいただけます。左側の扉はシューズクロークになっていますので、靴を履く際には腰かけベンチとしても大活躍。
ウォークインクローゼットには扉を設けずにラウンジスペースから延長させた空間。お気に入りの洋服をこちらにへ覗かせれば、ショップのようなしつらえに。季節の衣替えも楽しくなりそう。
※掲載の写真は2021年2月に撮影したものです。家具・照明・調度品・備品は販売価格に含まれておりません。なお、一部有償オプションが含まれております。予めご了承ください。
※掲載の間取りは、計画段階の図面を基に描きおこしたものです。また計画上の変更に伴い、内容等が変更になる場合がございます。予めご了承ください。
※撮影 exp|Atsushi Shiotani